今回の調査は、例年のゲームや⾦融、⼩売業界の動向に加え、IoTやサブスクリプションなど近年注目されている領域に関するものも含まれている。
エグゼクティブサマリー
同レポートによると、全世界でのアプリダウンロード数は、⽶国、⽇本、韓国といった成熟市場ではほぼ横ばいだが、インド、ブラジル、インドネシアなどの新興市場での伸びを見せ、過去最⾼となる2040億件に到達。1⽇のモバイル利⽤時間は全世界平均で3時間40分と、2018年から40分のびた。全世界のアプリストア消費⽀出は、2016年の2.1倍にあたる1200億ドルに到達したとのこと。世界における平均IPO評価額に目を向けると、モバイル中⼼企業は⾮モバイル企業に⽐べ、上場における平均評価額が825%増加したという。
また、ミレニアル世代の次世代であり、大きな人口層であるZ世代の非ゲーム系アプリのエンゲージメントが、⾮若年層世代を60%上回ったようだ。
今回初の調査領域
まず注目したいのがサブスクリプションの成功。⽶国では、⾮ゲーム系アプリにおける消費⽀出上位250のうち⽀出額の96%がサブスクリプションによるものであった。ゲームアプリと非ゲーム系アプリを合計した消費⽀出総額でも、25%がサブスクリプションによる消費であるという。世界においても、サブスクリプションは成功を収め、マッチング系アプリ「Tinder」、動画ストリーミングアプリ「Netflix」、「Tencent Video」が非ゲーム系アプリの消費⽀出ランキング上位3位を占めた。次に、モバイルがIoTデバイス郡の中枢を担っているということだ。米国においては、2019年の1年間だけで、IoTアプリの上位20位のダウンロード件数が1億6000万件を突破した。2025年までに「コネクテッドTV」や「コネクテッドカー」などのコネクテッドデバイスは252億台に達する見込みであり、モバイルは今後、ユーザーと周囲のデバイスをつなぐ、主要インターフェースとなると予測される。
最ブレイクカテゴリー
続いて、フィンテックアプリの台頭。ファイナンスアプリには、⾦融機関以外の企業が管理しているフィンテックアプリと、⺠間の⾦融機関や⾦融サービス会社が管理しているバンキングアプリがある。この2つの平均⽉間アクティブユーザー数(MAU)を比較すると、フィンテックアプリがバンキングアプリを⼤きく上回っているようだ。日本においては「◯◯Pay」の利用者増加に伴い、フィンテックアプリのMAU成⻑率が世界2位という結果となった。また、ファイナンスアプリは、ダウンロード数の伸びから2019年に最もブレイクしたカテゴリーとされている。アプリ別に見ると、前年からの⾼いレベルを維持したアプリもあるが、多くは前年⽐で⽬覚ましい成長を見せているのだ。
全世界で著しい成長を見せたファイナンスアプリの特徴として、利⽤されているアプリが国によって異なる点が挙げられる。アジアや欧州といった同じ地域でも国によって違うアプリを利用しており、各国が独⾃のファイナンスサービスを展開していることがうかがえるだろう。日本においては、「PayPay」「d払い」「LINE Pay」など国内企業のアプリが上位にきている。
「ゲームはモバイル」が定着しつつある
こちらも注目したいのが、爆進中のモバイルゲームがついにゲーム市場の60%を占有し、過去最⾼を記録したことだ。世界全体のゲームの消費⽀出において、モバイルゲームはその他すべてのゲーム形式を合計した額よりも35%⾼くなった。この背景には、「Call of Duty: Mobile」や「マリオカート ツアー」など、家庭用ゲーム機で人気のあるタイトルをモバイル向けにローンチしたということもあるようだ。ちなみに、消費⽀出の前年⽐成⻑ランキングにおいて国内1位に輝いたのは、実際の景⾊や地形などにコンピュータを使って情報を加えるAR技術を活⽤したゲームアプリ「Dragon Quest Walk」。モバイルゲームは消費⽀出において世界をリードするプラットフォームであり、2020年にはゲームアプリがアプリストアで1000億ドルを超えると予測されるなど、ビジネスチャンスの多い成長市場だと言えるとのこと。
5Gによりさらなる拡大か
最後に、⾼い重複利⽤率により市場が拡⼤している動画ストリーミングアプリ。 「Netflix 」や「Amazon Prime Video 」、「HBO NOW」や「Disney+」、「AppleTV+」など動画ストリーミング市場の競争は激化している。さらに、2020年には「HBO Max」、NBCUniversalの「Peacock」がローンチが予定されるなど、競争はますます激化しそうだ。そんな中、米国における「Netflix」ユーザーの「Disney+」利⽤率が25%となるなど、ユーザーの重複利⽤率が⾼いことも、市場拡⼤を牽引している要因のひとつであるという。
動画ストリーミング市場全体で見ると、「Netflix」が中国、ロシアを除く最多10カ国でランクインし、そのうち6カ国で1位を獲得。日本国内では、ECサービスの会費にサービス利⽤費が含まれているる「Amazon Prime Video」や、⺠放の公式無料配信ポータル「TVer」などが「Netflix」を利⽤時間で上回る結果となった。
同市場の成長は、⾼品質ストリーミング、ユーザー⽣成コンテンツの成⻑、オフラインモードの標準化などの業界の進化により、ユーザーの重点が画面サイズからモバイル視聴へと移行したことが大きいだろう。2020年春から商⽤化が予定されている「5G」により、その移⾏はさらに促進されると考えられているようだ。
世界的にモバイル市場は著しく成長をとげ、なおかつ今後も成長市場といわれている。ちなみに、日本においての2019年の「月間アクティブユーザー数」はゲームアプリ・非ゲーム系アプリともにLINEのアプリがトップを獲得。「ダウンロード数」については、ゲームアプリトップは「マリオカート ツアー」、非ゲーム系アプリは「Pay Pay」であり、「消費支出ランキング」のゲームアプリトップは「Fate/Grand Order」、非ゲーム系アプリは「LINE Manga」であった。今年も成長するモバイル市場に注目したい。
App Annie Japan 株式会社