皮膚の下に医療記録が保存されていれば、データベースを参照しなくてもワクチンの接種履歴がわかって便利だろう。とりわけ、医療用インフラが整っていない発展途上国では、こうした技術が有用になる。
こうした発想からMITの研究者らは、ワクチン接種と同時に皮膚の下に医療記録を滑り込ませる技術を開発した。
・迅速かつ正確にワクチン接種履歴が読み取れる
医療記録は肉眼では見えないパターンで保存される。これを特殊な機能を備えたスマホでスキャンすれば、迅速かつ正確にワクチン接種履歴を読み取ることが可能だ。分散医療記録の開発にあたって研究者らは、近赤外光を発する銅がベースの染料でドットを作り出した。ドットは直径約4ナノメートル。これが直径約20ミクロンの生体適合性微粒子によってカプセル化される。カプセル化のおかげで、注入された染料は、皮膚の下の所定の位置にとどまることができるという。
染料の注入は、注射器ではなくマイクロニードルパッチによって行う。マイクロニードルパッチは、はしかや風疹などのワクチン接種ですでに利用されていて、そのまま医療記録を組み込むことができる。
・5年後の記録読み取りに成功
パッチを貼ると、1.5mmのマイクロニードルが部分的に溶けて2分以内にワクチンと染料が放出される。実験では最大5年後に、近赤外光を検出するスマホのカメラで染料のパターンを読み取れたという。
最小限の侵襲で、各自に医療記録を保持できる同技術だが、安全性のさらなる確認が行われてからの実用となりそうだ。また、記録できるデータの量も今後拡大が計画されている。
研究者らは現在、アフリカの発展途上国の医療従事者に意見を求め、同技術を活かす最良のやり方を探る予定だ。
参照元:Storing medical information below the skin’s surface/ MIT News