同報告書はユニセフ・イノチェンティ研究所とLSE ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(ロンドン大学)が、Global Kids Onlineの調査に基づいてまとめたものである。
過度な制限は子どもの可能性を奪う
ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの11カ国における1万5,000人近くの子どものインターネット利用に関するデータを比較し、まとめられた同報告書は、子どものインターネット利用は娯楽の要素が強いものであっても、デジタル技術習得に重要だと指摘。ユニセフはこれを受け、IGFにて「子どものインターネット利用の行き過ぎた制限は、子どもたちが学習とスキルを身に着ける機会を奪う」と述べた。
同報告書は、インターネットアクセスが広範な子どもと制限されている子どもの間にはデジタルスキルの差があると指摘。ゲームや動画などのエンターテイメントは幼い子どもにとって教育的、情報的、社会的なネット上での経験に関心を抱くきっかけとなり、インターネット上でより広範なコンテンツに興味を抱き、さらにまた活動範囲を広げていく。こうした結果、デジタルスキルはもちろん、さまざまな能力も成熟していくという。
おとなの役割
子どものインターネット利用について一般的に取り上げられるのはリスクがほとんどで、インターネットがもたらすレジリエンス(回復力・柔軟性)やデジタルスキル構築に関してはあまり触れられない。ユニセフ・イノチェンティ研究所所長代行のプリシラ・イデレ氏は「道路の渡り方を教えるのと同じように、子どもたちにはインターネットの使い方を教えるべきです」と述べた。また、同報告書の共著者であるダニエル・カルデフェルト・ウィンター(ユニセフ・イノチェンティ研究所 子どもとデジタル技術の研究主任)は、「最も重要なことは、子どもたちがサポートを必要としている時に、おとなはそれに応える準備ができているということです」と述べている。
おとながいざという時のためにしておく準備のひとつとして、リスクを理解するということがあるだろう。同報告書は、インターネットの使用における子どもへのリスクの事例として、「性的コンテンツ」「自傷行為の内容」「ヘイトスピーチ」などに晒されることや、SNSのアカウントの公開、そしてネット上の情報の真偽の見極めができないことなどを挙げた。
子どもたちがこういったリスクに晒されることを最小限に抑え、インターネットをうまく活用できるなら、子どもたちはデジタル世界を便利に楽しく安全に渡っていけるだろう。ユニセフは、ハイテク企業に対し、子どもにとって有害なコンテンツの監視および削除を積極的に求めている。しかし、子どもにとって一番重要なのは保護者だという。保護者が子どもと一緒にインターネットについて話したり、一緒に活動したりすることが大切とのことだ。
また、同報告書では、ネット上の情報の真偽の見分け方については、学校での授業の一環として指導がなされるべきだとし、教師への研修機会が必要だと強調した。
「だめ」と言われるとしたくなるのが子ども。そこで、おとなが「なぜだめなのか」を話し、あるいは一緒にリスクを体験し、子どもに納得してもらうしかないのかもしれない。これからの世界で、デジタルスキルは重要なものになるだろう。子どもたちが安全にデジタルスキルを身につけるために、保護者をはじめとするおとなは十分に準備をしておく必要がありそうだ。
PR TIMES