日本独自の文化やコンテンツを海外輸出する目的で設立されたクールジャパン機構だが、一見日本文化とは殆ど関係ない海外のライドシェアに投資を行った。が、その意図をたどればクールジャパン機構本来の設立意義と見事に合致する。
・Go-Jekの動画配信サービス
Go-Jekは、今やスーパーアプリに成長した。オンライン配車だけでなく、食事や燃料、マッサージ師派遣、ゲーム内課金なども同一のアプリで実行できる。その中に、動画配信サービス「Go-Play」というものがある。この業界でも非常に激しい競争が発生しているが、Go-Playは押し寄せる外資に対抗できる数少ない内資系サービスだ。
この度のクールジャパン機構からの出資で、Go-Playでは日本製のアニメが配信されるのではという予測が現地メディアでささやかれている。インドネシアでも日本のアニメは大人気で、大規模イベントも開催されるほど。地元テレビ局にとっては、日本のアニメは一定の視聴率を確保できる盤石なコンテンツでもあるのだ。
有料チャンネルの分野においても、「ANIMAX」や「WAKUWAKU JAPAN」といった日本の作品を放映するチャンネルはインドネシアでも視聴されている。
2014年にアニメ「クレヨンしんちゃん」が通信当局に規制された際、ネット上ではそれに対する反発の声が巻き起こった。インドネシアのミレニアム世代(20代前半から10代後半までの世代)は、日本のアニメを観て育ったと言っても過言ではない。
現地の動画配信サービスでアニメを放映する意義は、非常に大きい。
・飲食デリバリー部門にも照準
クールジャパン機構の狙いはもうひとつある。それは飲食デリバリー部門「Go-Food」だ。飲食店の出前をアウトソーシング化することにより、経営者は人件費をかけずともより大勢の利用者にリーチできるようになる。現に地方都市の飲食店が、Go-Foodと契約してから業績を伸ばしてジャカルタに進出するということも相次いだ。ジャカルタ首都圏に店舗を構えた日系ショッピングモール「AEON」も、Go-Foodとタイアップした飲食ブースフェスティバルを開催している。
和食レストランはインドネシアに限らず、東南アジア諸国で根強い人気を獲得している。他の業種の日系企業が撤退しても(即ち日本人駐在員がいなくなっても)、飲食分野だけは変わらず営業を続けるということは現地駐在員の間でもささやかれている。
以上のことを鑑みると、今回のクールジャパン機構によるGo-Jekへの出資は「日本文化の輸出」を狙ったものだということが分かる。
クールジャパン機構プレスリリース