マイカーが住民の「あし」になる
山古志地域では、2004年の新潟県中越地震で被災地となって以降、路線バスの運休、減便、2007年にはついに廃止が決定した。現在は特定非営利活動法人中越防災フロンティアが主体となってコミュニティバス「クローバーバス」を運行中だが、本数は不足しており、増便の宛はなく、住民の交通需要は満たされていない現実がある。
そこで、Azitの運営するモビリティ・プラットフォーム「CREW」を利用し、住民の交通需要を満たす試みが始まったのだ。
「CREW」は、スマートフォンアプリを起動し、出発点と目的地を設定すると、近くにいるドライバー(CREWパートナー)とマッチングし、乗車できるモビリティ・プラットフォームである。目的地到着後、ドライバーとライダー(乗車した人)が相互評価し、ライダーはドライバーにガソリン代や高速道路代などの実費を、Azitに対しシステム手数料を支払う。この時、ライダーがドライバーに対して任意で謝礼を支払うこともできる。
同社は安心安全を最大限考慮し、厳正な審査を通過した人のみをドライバーとして登録。また、ドライバーとライダーの個人情報の交換は禁止している。そして、サービス利用中の困りごとにはチャットで丁寧に対応するカスタマーサポート体制を整備しているため、早い対応が可能だという。
都市部と地方、それぞれに合ったMaaSを
山古志地域は、錦鯉の発祥の地とされるほか、国の重要無形民俗文化財に指定されている「牛の角突き」を本州で唯一伝承している緑豊かな地域だ。1947年当時は人口が約6,800人だったが、現在は約1,000人まで減少し、高齢化・過疎化が深刻なうえに、被災地となったことで、住民の移動手段はかなり制限されている。中越防災フロンティアの理事・事務局長 田中康雄氏は、「CREW」による移動問題の解決はもちろんのこと、これを機会に高齢者がスマートフォンに慣れ、より快適な見守りサービスや配食サービスの提供に繋げたいとコメントした。
同社は、今回のような地方の移動問題と並行して、都市部での交通課題調査にも目を向けている。2019年7月に紀尾井町戦略研究所と合同で行った都市部の二次交通課題の調査では、都市部生活者の約半数が交通に不便を感じている現状や、都市部生活者は既存の交通機関の拡充を求めており、「CREW」のような互助モビリティにはその補完的役割を期待しているということがわかったという。
今年の7月にはタクシー相乗りマッチングアプリ「nearMe.」も、長岡市で実証実験を行っている。MaaS領域のサービスが徐々に地方に拡がりつつあるようだ。今後も同社には、都市部と地方の交通需要を理解し、それぞれの交通課題を解決に導いていってほしい。
PR TIMES