トランザクションの検証は報酬に動機づけされたノードにより自発的に行われるため、銀行などの特定の管理者に依存せずシステムが回り続ける。
ただ、システムを維持するための膨大な電力が問題になっていて、たとえばビットコインの電力消費量はオーストリア一国分といわれる。10月16日、ブダペストで開催された分散コンピューティングに関する国際シンポジウム(DISC 2019)では、この問題を解決する可能性のある技術にベスト論文賞が与えられたようだ。
・確率計算でトランザクションデータの送信回数を極限まで減らす
ブロックチェーンにおいて、トランザクションの整合性を検証する際には、複雑な計算とそれに伴うコンピューティングパワーが必要となる。たとえば、ビットコインを支えるトランザクション検証モデル(コンセンサスアルゴリズム)、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」では、すべてのトランザクションを一括で検証する必要があり、トランザクション数が増加するのにともなって計算量も増加する。これに対して今回のアルゴリズムでは、トランザクションデータを特定の確率によって選択されたグループに送信することで、ビザンチン(悪意ある参加者やコンピュータの故障)への耐性を得ることが可能。これによって計算量の負担が大幅に軽減される。
さらには、トランザクション数が増加しても時間内の処理量が増やせない「スケーラビリティ問題」の解決にもつながるものだ。
・トランザクションの処理速度は1秒未満
現在、ブロックチェーンを活かすために、電力消費量の増加やスケーラビリティ問題を解決を目的としたさまざまなコンセンサスアルゴリズムや検証技術が開発されていて、発想としてはイーサリアムが実装を目指す「シャーディング(検証ノードをランダムに分割する手法)」などが同アルゴリズムに近いだろう。IEEE Spectrumによれば、同アルゴリズムでは、電力を”Eメール交換と同じ程度”しか消費せず、排出する二酸化炭素量は、「トランザクションあたり推定300kgのビットコインに対し、トランザクションあたりわずか数g、処理速度は1秒未満」とのこと。
論文の著者らは、合意形成を必要としない同アルゴリズムへのスマートコントラクトの実装なども試しているようで、ブロックチェーンの代替ともなり得るだろう。
参照元:Scalable Byzantine Reliable Broadcast (Extended Version)/arXiv.org