9年の歳月を経て完成した日本発の重力波望遠鏡「KAGRA」が、世界ですでに稼働中の3台(2台の「LIGO」および「Virgo」)の観測体制に加わることになった。
アインシュタインが存在を予言した重力波が初めて直接観測されたのは2015年のこと。ワシントンとルイジアナにある「LIGO」によるもので、この偉業を成し遂げたプロジェクト創始者の3人は、ノーベル物理学賞を受賞している。
それ以来ヨーロッパの「Virgo」も観測に加わり、重力波の可能性のあるシグナルを、なんと30以上も検出している。今回「KAGRA」が重力波検出ネットワークに加わることで観測体制の大幅な強化が見込まれる。
・極低温冷却装置により熱雑音を抑制
東京大学宇宙線研究所(ICRR)らが中心となって建設が進められた「KAGRA」。建設地は、宇宙素粒子研究施設「スーパーカミオカンデ」でも有名な飛騨市神岡町だ。地下で稼働することで風や地震によるノイズを軽減し、極低温冷却装置によりミラー内部の熱雑音を抑制。これらの革新的な技術は、高感度でのシグナル検出に寄与するとされる。
また、4台目の検出器が追加されることでネットワーク全体としての検出率や分析能力も向上し、宇宙の大規模イベントの理解が進みそうだ。
・たくさんあるほど検出精度が向上
重力波は、ブラックホールの衝突や超新星爆発などにより発生する時空のゆがみだが、重力波検出器が増えるほど、これらがどちらの方向で起こったかが特定しやすくなる。例えば、「LIGO」と「Virgo」による2017年の観測では、2つの中性子星の衝突があった方向を、約30平方度(空全体の0.1%未満)の区画に絞り込めた。
これに「KAGRA」が加わることで、宇宙のイベントが発生した位置を約10平方度の区画に絞り込めるようになり、宇宙望遠鏡など光を観測する望遠鏡での追跡観測が大幅にやりやすくなる。
現在、試運転段階の「KAGRA」は、今年12月に稼働。2019年4月1日に開始されたLIGOとVirgoの3回目の観測に参加する予定となっていて、重力波天文学への貢献に期待がかかる。
参照元:大型低温重力波望遠鏡KAGRA完成、年内にも共同観測開始へ/東京大学
KAGRA to Join LIGO and Virgo in Hunt for Gravitational Waves/Caltech