そんななか人気を集めているのが、オンライン上でプログラミング学習ができるサービス。今回取り上げる「Progate(プロゲート)」もそのひとつだ。
翻って、プログラミング学習を始めてみたものの、途中で挫折してしまう人も多い。あるいは、プログラムはやりきったがその先にいけないというモヤモヤを抱えている人もいるだろう。
では、未経験から(その先の)エンジニアになるにはどうすればいいのだろうかーー。そんな疑問を、株式会社Progateの代表・加藤將倫氏にぶつけてみた。
「入り口」は整った。だたその次のフェーズに行くのは……
ーーここ数年、プログラミング学習を始める人が多くなってきたように感じているんですが、実状としてはいかがですか。
加藤:確かに、未経験でプログラミングの勉強をする人は多くなってきていると思います。
弊社が提供しているオンラインプログラミング学習サービスの「Progate」でも毎年利用者数が増加していて、2018年は爆発的にユーザーが増えました。
このサービスは主にプログラミング未経験者を対象にしているので、やはり「未経験からエンジニアへ」という流れはあるんじゃないですかね。
ーー未経験からエンジニアになりたいと思う人が増えている理由はなんだと思いますか?
加藤:エンジニアを志望する理由はさまざまですが、高い給与水準や自由な働き方とかが大きいんじゃないでしょうか。あとは、単純作業のような仕事ではなく、自分で何かものを生み出す“クリエイティブな仕事”がしたいというのも理由としてはあるかもしれません。
その上で、最近になってエンジニアを目指す未経験者が増えている背景には、サクセスストーリが出てきはじめている、というのがあると思います。未経験からプログラミングを勉強して有名なベンチャー企業に就職したり、習得した技術を活用して起業したり。
そういう人たちを見て、「自分もやってみたい!」ってなるんじゃないかな。僕も最初始めたときはそんな感じでしたから。
ーーなるほど。一方で、そうやってプログラミング学習を始めてみても、エンジニアになれずに挫折してしまう人も多いのでは……?
加藤:そうですね……それはあると思います。この問題はサービス提供者側の永遠の課題かもしれません。
ーー加藤さんは、なぜこの「挫折」が起きてしまうと思いますか?
加藤:プログラミング学習における挫折ポイントは、学び始めのタイミングと、初級フェーズから中級フェーズへ上がるタイミングだと思っています。
ここ数年でプログラミング学習のサービスや書籍が出てきたことで、学習を始めるハードルはかなり低くなってきました。結果として、「学び始め」で挫折する人が減って、ある程度プログラミングの全体像が掴めるレベルまでは多くの方がたどり着けるようになったと思います。
ーー確かに、私もProgateを利用させていただきましたが、「プログラミングの基本」はなんとなくわかったような気がします。
加藤:ありがとうございます。昔は、そこにたどり着くのも茨の道だったんです。
難解な書籍を読んでみたり、よくわからずにとりあえずコードを書いてみて試してみたり。もちろん今と違ってサーバーも自分で立てる必要がありますしね。
私がプログラミングを学んだ2010年前後でも、まだそういったサービスは多くなかったので、大学の授業を受けたり、海外のオンラインサービスをやってみたり。かなり苦労したのを覚えています。
ーーここ数年でプログラミング学習の「入り口」が整って、初級レベルに到達しやすくなったと。
加藤:そうですね。Progateでもその部分はかなり整ってきました。しかし、初級レベルから次のフェーズに進めないという課題は現状でもまだ解決されていません。
もちろん、スムーズに中級・上級レベルに進んでエンジニアとして就職した人や、自分でプロダクトを作っている人もいます。ただ、それ以上にここで挫折する人が多いのも事実です。
自分も最初は「つまらんな」と思っていた。「好き」になるために必要な体験とは
ーーでは、実際にエンジニアとして活躍できる人と、初級レベルから次に進めない人では何が違うのでしょうか。
加藤:そもそもProgateでいうと、このサービスを利用しさえすれば、ベテランエンジニアと遜色ないレベルになれる訳ではありません。
その上で、Progateでは足りない部分を埋めるためには、「自分で何か作ってみる」という体験は間違いなく必要だと思いますね。
もちろん、僕たちもユーザーが自走できるところまで導きたいとは思っているので、コンテンツの奥深さを追求しています。ただ、現状では十分じゃないのも事実。
Progateのコンテンツ内の「わからなければ答えを見られる世界」ではなく、自分が作りたいものに対してどのような要件が必要かを考え、わからなければググる。こういった経験はエンジニアになるための必要条件だと思います。
ーーでも「何か作ってみろ」と言われても、何も作りたいものがなかったりするんですよね……。
加藤:それって結構面白い話で、日本独自の悩みなんですよね。
最近、海外展開のためにいろいろな国の方とお話をするんですが、プログラミングを学んでいる人の多くが、作りたいものがはっきりしていたり、自分の目標が明確にあったりと、目的意識がとても高いんです。
でも日本では、明確な目的はないけどとりあえずプログラミングしてみよう、というのが成り立っていますよね。
ーーでは、プログラミング上達のためには「目的」が必要なのでしょうか?
加藤:まあそれもひとつのモチベーションにはなると思います。でも必ずしも目的が必要かと聞かれると……。
例えば、僕の場合だと目的が先にあるというよりも、単純にプログラミングが大好きなんですよ。今でこそ経営業務の割合が増えていますけど、昔はプロダクトも自分で作っていましたし、正直今でももっとコードを書きたいと思っています(笑)。
ーー「好きこそものの上手なれ」ということですね。
加藤:そうですね。でも、最初から好きだったわけじゃないですよ。むしろ、勉強を始めた頃は嫌いでしたし、自分には向いていないと思ってました。
でも、やってるうちに「うまくいった」と思うことがあったり、それを誰かに見てもらえたり、ちょっとお金になったり。そういうことがあると「やっぱりプログラミング最高だな」ってなるんですよ。
もちろん、そう思えるかどうかは個人依存なところがあるので、やっぱり挫折する人が0になることはないと思います。
プログラミングの世界では技術がどんどん新しくなるので学び続けることは必須。そうなると少なからずプログラミングが好きじゃないと続けられないんじゃないかなって。
でも多くの人が、その成功体験をすることなくプログラミングをやめてしまっていて、それは勿体無いなと思ってしまいます。「作りたいもの」がなくても、とりあえず「ToDoアプリ」とか「Twitter」のクローンみたいなものを作ってみるのがいいんじゃないかな。
ーープログラミングの勉強をしていると「まずは自分で作ってみよう」みたいなことをよく言われますが、ひとつの成功体験を得るために作ってみる、ということなんですね。
加藤:そうですね。ベテランといわれているエンジニアの人たちも昔は初心者だった訳で、みんな最初から“プログラミング大好き人間”だった訳じゃないんですよね。
最初に何かを作るための動機は、「これを作りたい」みたいな綺麗なものじゃなくても、お金が目的でもいいし、友人に自慢したいでもいいし、自分にあった動機付けでいいと思います。
そうやって作っているうちに、いつか「プログラミング楽しい」になっていくんじゃないかな。
ーーそう言われるとホッとします。
加藤:Progateは、その「作ってみる」ができるレベルまで導くことができるサービス。今は初級レベルから次のレベルに上がるためにはどうすればいいのかを考えて、プロダクトを作っています。
それと同時に「対象者」という点も重要で、できるだけ多くの人にプログラミングを学ぶきっかけを作りたいと思っています。
今後、学校でプログラミングが必修科目になっていくと、強制的に学ばざるを得ない状況になりますよね。プログラミングに触れる人が増える一方で、嫌いになってしまう人も出てくると思うんです。
そういう人たちにとっても受け皿になれるようなサービスを作りたいなって。Progateなら楽しく学べる、と思ってもらえると嬉しいですね。
(文・栄藤徹平)
加藤將倫(かとう・まさのり)
1993年愛知県生まれ。東京大学工学部中退。小学校と中学校をオーストラリアのパースで過ごす。2014年7月にオンラインプログラミング学習サービスのProgateを創業。『Forbes 30 Under 30 ASIA 2018(Forbesが選ぶアジアを代表する30才未満の30人)』に選出。