MITの研究チームが、環境の温度変化に応じて複雑に変形する構造を開発した。同技術は、OrigamiRobotのようなものよりも複雑な構造に変化し、どのような形にするかは事前に設計することが可能だ。
将来的には、状況によって機能が変わるソフトロボットの人工筋肉や、自動で展開するテントなどが作れる可能性があるという。
今回デモンストレーションとして3Dプリントされたメッシュシートは、温度の変化に反応して人間の顔の形に変形する。
・3D描画された目的の形に向けて逆算する
フラットなメッシュシートを設計するにあたって、まず目標となるオブジェクトを描画。変形に必要なパターンを計算して構造に反映する。
研究チームはまず、ガウスの顔を3D描画。この画像から、フラットなシートが顔の形状になるまでの、各パートの膨張/伸縮距離をマップに落とし込んだ。求められた距離に変形できるパーツ構成を計算するアルゴリズムを考案。温度が上昇すると膨張するゴム素材「PDMS」を利用し、さらには、素材にガラス繊維を注入することで、温度応答性を調整している。
メッシュシートを3Dプリントした後は、250℃のオーブンで硬化させ、取り出してから塩水に入れて冷却。するとそこには人の顔の形が現れた。
・同時に複数の折り目をつけるのは至難の業
一見シンプルそうに見える同技術開発にあたってはかなりの苦労があったようだ。シートが目標の形状に変形する際の膨張/収縮距離を求める計算式を考え出し、シミュレートするまではよかった。だがリアルな素材では伸縮に物理的制約があり、フラットな状態から同時に複数の折り目をつけるほど伸縮させることは不可能だと気づいたという。研究チームは表面が連続したシートの代わりにメッシュシートに変更。これにより折り目をつけたりといった大きな変形が容易になった。
またじつは、メッシュシートの格子部分も複雑に組み込まれていて、各格子骨が温度により異なる反応をする。こうした構造により、人の顔のような複雑な変形が可能となった。
変化後の形状を細かく作りこめる同技術を応用することで、水に入れると泳ぎ出すクラゲロボットなど、環境の変化に応じて挙動が変わるプロダクトの設計が可能。航空宇宙工学やロボット工学などさまざまな分野で活用されそうだ。
参照元:This flat structure morphs into shape of a human face when temperature changes/MIT News