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Start Up スマイルズ遠山社長が語る! アート×ビジネスが融合したThe Chain Museumの目指す世界観

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スマイルズ遠山社長が語る! アート×ビジネスが融合したThe Chain Museumの目指す世界観

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よくビジネスにはアート的な視点が必要だといわれる。アート思考やデザイン・シンキングなど、クリエイティビティを生み出すプロセスが、ビジネスにイノベーションを起こすフレームワークとして注目を集めているのだ。

今回は、まさにアート×ビジネスを地で行く取り組みを多く手がける株式会社スマイルズの代表取締役社長・遠山正道氏に、新たな事業である「The Chain Museum」の概要や立ち上げの背景、今後の事業展開について話を伺った。

The Chain Museumの目指す世界

唐津市湊風力発電所に設置された、須田悦弘『雑草』(撮影:遠山正道)



――そもそもThe Chain Museumというプロジェクトは、どのようにして立ち上がったのでしょうか?

遠山氏:もともと私自身アートが好きで、様々なアーティストの作品を観に展覧会やアートフェスティバルに足を運んでいるのですが、日常の生活にもっとアートに触れる場ができないものかと常々思っていたんです。

「The Chain Museum」の構想について具体的に考え出したのは、2017年の「アート・バーゼルバーゼル」参加がきっかけですね。

アートバーゼルというのは、世界最大級の現代アートフェアーで、アート界を牽引するトップオブトップとして存在しているんですが、実際に訪れ現実を目の当たりにすると、その権威性や敷居の高さから疎外感を感じてしまったんです。

それで美術館やギャラリー、芸術祭などがもっと日常に介入してくるような場を作ったら面白いのではと考えるようになりました。音楽にメジャーレーベルやインディーズ、オルタナティブというジャンルがあるように、アートにももっと多様なジャンルがあっていいんじゃないか、と。

まだまだ敷居が高いと思われがちな、ある種権威的なアート業界と、我々の生活者目線としての日常が交差した領域に可能性を見出しました。

それで、アートと個人が直接繋がり、気軽にアーティストを支援できるプラットフォームを作ろうと思ったんです。

――なるほど。遠山さんご自身が感じられた疎外感から新たなアートの仕組みを作ろうと思ったんですね。

遠山氏:はい。そしてアートバーゼルの翌年、The Chain Museumの話をするためにクリエイター集団「PARTY」代表の伊藤直樹さんとランチする機会を作ってもらいました。

ちょうどその頃、ブロックチェーンが話題になっていた頃で、「チェーンって面白いよね」など話が盛り上がり、結果的に私個人との共同出資という形で手を組むことになったんです。ここで初めて、テクノロジーの考えが入ってきました。

――改めて「The Chain Museum」の概要について伺えますでしょうか。

遠山氏:The Chain Museumは、もともと「小さくてユニークなミュージアムを世界中に沢山生み出していく」というコンセプトのもと、立ち上げたプロジェクトです。

現在は、PARTYとの合同会社として主な事業内容を3つ展開しています。

アーティストとコラボレーションしたプロジェクトを立ち上げ、ビジネスやテクノロジーなどを掛け合わせて手がけるミュージアム事業。好みや価値観によってアーティストを支援したり、繋がったりできるプラットフォーム「ArtSticker」事業。そして、クライアントから依頼を受け、その場所に適したアーティストのキュレーションなどを行うコンサルティング事業です。

――そのひとつの結果としてアーティスト支援プラットフォーム「ArtSticker」が生まれたわけですが、多くの人に周知させる方法はどのようにお考えですか?

遠山氏:よく登壇したイベントで「アートやデザインを好きになるにはどうしたらいいか」という質問をもらうことがありますが、無理やり好きになるのも酷だなと思うんです。

別に興味が湧かないのならそれはそれでいい。でもみんな何かしらアートに対して関心はあると思うんです。ArtStickerは芸術作品に少しでも関心があり、日常に何か新しいものを求めているユーザーがゆるやかに集まる場として、ブランディングしていきたいと思っています。

テクノロジーとアートをかけ合わせたからこそできる、色々な作品との出会いや発見、作家とユーザーとのコミュニケーションが生まれることによるSNS的な繋がりなど、「アートというカルチャーの住人になっていく」ユーザー体験を目指した設計をこれからも考えていきたいですね。

今年の8月29日にはAndroid版とWeb版もリリースしましたが、今後もどんどんアップデートさせていきたいと思っています。

――ArtStickerは「アーティスト支援プラットフォーム」を銘打っていますが、具体的にはどのような仕組みなんでしょうか?

遠山氏:気に入ったアーティストの作品があれば少額から支援できる仕組みです。120円から支援ができるので、ユーザー自身は好きなアーティストを気軽に応援できます。一方で、アーティスト側には、これまでの入場料収入やアート作品の販売で得る収入以外の、第3のお金の流れが作れます。

交換経済から、贈与経済へ。昨今よく聞かれるようになった言葉ですが、ArtStickerも、アートの新しい価値を生み出すきっかけになるプラットフォームにしていきたいですね。

アートとビジネスの交わりから生まれる新しい発想や体験

――ArtStickerの事業を通して伝えたいことは何ですか?

遠山氏:アートをより身近に感じ親しみやすくする世界を創れたらと考えています。

一昔前は、ブログを公開することや、インターネット空間に自分の考えを公開することにも抵抗感があったはず。それと同じで、ArtStickerを通して日常にアートが介入する世界を身近にすれば、その敷居もなくなってくるだろうと思っています。

実際、このプロジェクトをギャラリーやアーティスト、作家関係者に話すと皆すごく関心を寄せてくれるんですよ。

日の目を見ずにうまく才能が引き出されていないアーティストは少なくありません。ArtStickerを通して、個人とアーティストを繋ぐ新たなプラットフォームを構築すれば、
アート作品の表現としての場、コミュニケーションとしての場、そして第3のお金の流れが生まれます。

そうすれば、アーティストはもっと活動の場が広がったり、売ることに注力しなくても作品作りに専念できたりしますよね。一方で、アートに対して敷居の高さを感じていた個人が興味を持ち、親近感が生まれることもあります。

――なるほど。これまで以上にアーティストの表現の場が増えれば、さらに注目される人も増えそうですね。

遠山氏:何か変えていかないといけない。もっと新しいことを取り入れたり、チャレンジしたい。こう思うのは何も、アート業界の人たちだけでなくビジネスマンも一緒です。今のままでいいとは誰も思っていないでしょう。

だからこそ、イケてる場を作ることでアート業界に新しい風を吹かせたい。アートの唯一性を尊重しつつ、日常生活の中にアートが入り込む世界の創造。これが、われわれが事業をしていく上で伝えていきたいメッセージですね。

――最後に、遠山さんが仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

遠山氏:自分自身、ビジネスマンとアートコレクター、そしてアーティストという複数の立場があるので、「アート」と「ビジネス」の橋渡し役を担えたらと思っています。

アーティストとビジネス、さらにはテクノロジー、サイエンスが絡んでくると、さらに高い次元のものができるはずです。我々が作るシステムによって、アーティストが新しい表現や発想を生み出せたら、アートとビジネスはもっとコラボレーションできるのではないかと思っています。

その新しい発想や体験こそが、アートとビジネスの掛け合わせの面白さであり、私が事業を行う上でも大事にしていることそのものです。

遠山正道(とおやま・まさみち)
日本の実業家。株式会社スマイルズ代表取締役社長。食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ネクタイ専門店「giraffe」等を展開する。2018年、クリエイティブ集団「PARTY」とともに「The Chain Museum」を設立。

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