衛星インターネットは地球の隅々にまでアクセス範囲が広がる点においてたしかに革命的だが、ユーザーにとっての直接のメリットもありそうだ。
アメリカでブロードバンドに関する調査などを手掛けるBroadbandNowによれば、衛星インターネットが普及することでアメリカのユーザー全体で、年間300億ドル(約3兆1700億円)もの恩恵を受けるという。
・低遅延のインターネットを隅々まで
地表に近い衛星からもたらされるインターネットには、有線ブロードバンドにもひけをとらない低遅延の接続が期待されている。これは、SpaceXやAmazonといった衛星インターネット事業者が、あらゆる現行ISPにとっての競合となり得ることを意味する。
実際こういった事業者の参入で、多くのアメリカ人は現在よりも有利な価格でインターネットを利用できるようになるという。
BroadbandNowの分析結果によれば、ISPの選択肢が複数ある地域では、選択肢が1つしかない地域よりも低価格でサービスが受けられる傾向にあるという。
例えばISPが1社しか選べない地域に暮らす約1億400万人のアメリカ人は、最安プラン約68ドル(約7200円)/月でインターネットを利用している。これに対して、選択肢が2社ある7500万人のアメリカ人では約59ドル(約6300円)/月で、選択肢が5社以上ある1500万人のアメリカ人では約47ドル(約5000円)/月でインターネットが利用できる。
・2億6300万人のアメリカ人で大きく利用料削減
仮にSpaceXのStarlinkだけがサービスを開始したとすれば、ISPが3社以下の地域で暮らす約2億6300万人のアメリカ人に影響を与え、年間140億ドル(約1兆4800億円)以上の利用料削減をもたらす。また、4社以上の選択肢がある地域でも年間約40億ドル利用料が削減される可能性がある。さらには、AmazonのProject Kuiperがこれに加われば、利用料の削減額は年間300億ドル以上になると推定される。
もちろん、現在ISPの選択肢がまったくない地域で暮らす約1000万人のアメリカ人も、インターネットが利用できるようになるのも大きなインパクトだ。
SpaceXは、まず北米でサービスを開始するが、準備が整い次第世界展開を始める。インターネット普及率の高い日本での影響は限定的と思われるが、衛星インターネットの普及は世界のサービス体系を劇的に変える可能性がある。
参照元:Bezos and Musk’s satellite internet could save Americans $30B a year/TheNextWeb