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Start Up 「エアモビリティで移動できる未来」について、AirX代表の手塚さんに聞いてきた

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「エアモビリティで移動できる未来」について、AirX代表の手塚さんに聞いてきた

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空の交通手段としてパッと思い浮かぶものに飛行機とヘリコプターがある。しかし、実際に移動手段としてヘリコプターを検討したことのある人は一体どれくらいいるだろうか。

これまで、ヘリなどの小型航空機の運賃は非常に高価で、利用者は一部の人に限られていた。しかし今、テクノロジーの力を駆使してヘリコプターの運賃を現実的な価格にし、中距離の移動に最適な選択肢を提供しようとする会社が現れている。株式会社AirXだ。

同社では、ヘリのチャーターサービス「AIROS」「AIROS Skyview」と、ライドシェアサービス「CodeShare」を運営している。

現在の日本の交通課題を見つめ直し、空に可能性を見出したAirXは、どのような未来を思い描いているのか。同社代表の手塚氏に話を聞いてきた。

ヘリコプターの料金が高いのはなぜ?

――正直、「ヘリコプター移動」は映画の中の世界のようで、どうも現実味が湧かないんですが……。

手塚氏:おそらくほとんどの方がそう感じていると思います。

しかし、国土面積が狭く山の多い日本において、ヘリコプターは最適な移動手段と言えます。実際、日本には約800機ものヘリコプターがある「ヘリコプター大国」なんです。

――そうなんですか! とはいえ、やはりネックになるのは利用料金です。そもそも、なぜヘリコプターの利用にはそこまで高い費用がかかるんでしょうか。

手塚氏:理由はいくつかあります。

まず、ヘリを運航する航空会社ではさまざまな固定費が必要になります。しかし利用者が少ないと、その固定費を回収するために単価をあげる必要があるんです。さらに、ヘリをチャーターして移動する場合は、片道代金だけではなく、ヘリが出発地に戻るための費用まで払わなくてはいけません。

また、ヘリを着陸するには航空局から着陸許可をもらう必要があり、手続きには数週間必要なので、事前に着陸許可を取得していない場所へ移動する場合は数週間〜1ヶ月前に予約をする必要があるんです。

――使い勝手が悪く費用が高い、だから利用者は減り、さらに料金が高まる……負のスパイラル、ということですね。

手塚氏:この状況に陥っているのは、それぞれの航空会社が個別で旅客輸送のサービスを提供しているからだと思います。

私たちは、ユーザーと航空会社の間に立ち、プラットフォームを提供することで、ヘリの利用料金を現実的な価格にしようとしているんです。シェアリングエコノミーの考え方で、空いているヘリコプターと安く利用したいユーザーを繋げています。

ヘリでの移動が現実的なものに

――現実的な価格とは……具体的にどれくらいの料金なんでしょうか?

手塚氏:最初のステップとして考えているのは、タクシーと同じくらいの料金です。今、タクシーは1kmあたり300〜500円程度ですよね。km換算でこれくらいの料金になれば、現実的な料金と言えるのではないでしょうか。

すでにルートによってはこの料金設定が実現しているんです。例えば、東京-箱根間は1kmあたり200円を切るくらいの料金になっています。

――そうなんですか! タクシーも少し高いイメージはありますが、それくらいの料金なら手を出せるかもしれません。

手塚氏:また、先ほどお話しした「着陸許可」の問題も、需要を予測して許可を取っておくことで解決しています。

気軽に、とまでは言いませんが、手を出しやすい移動手段に近づいているんじゃないでしょうか。

――ヘリコプターを提供する事業者側の反響はいかがですか? 単価が下がったことで、反感を買っているとか……?

手塚氏:そんなことはないですよ(笑)。利用者が増えていることを喜んでいただいています。運航数が増えるとパイロットや人材の育成にも繋がるので、そういった意味でも良い印象を持ってくれている会社は多いです。

また、最近ではドローンが出てきたことで、空撮や農薬散布、送電線の点検といったヘリコプターの仕事がドローンに置き換わってきているという現状もあり、事業者側も旅客輸送の重要性を感じ始めていたんです。

ヘリコプターが行き交う世界

――先ほど、ヘリの料金設定で「最初のステップ」とおっしゃいましたが、将来的にはどれくらいの料金を想定しているんですか?

手塚氏:そうですね、長期的には電動化や自律飛行を取り入れると1kmあたり2、30円という料金設定も不可能ではないと思っています。「東京-箱根間2,000円」とか。

――そんなにですか!? それはあくまで理想ですか? それとも本当に実現が可能なんでしょうか?

手塚氏:私は本当に思っていますよ。エアモビリティの移動にはそれくらいのポテンシャルがあると思うんです。もちろん、そこに到るまでにはさまざまな課題があります。特に大きいのは国としてのルールです。

先ほどお話しした離発着の問題もそのひとつ。ヘリでの移動を生活に溶け込むものにするためには、安全が確保できる場所であれば、どこからでも離陸できて、どこにでも着陸できる、という体制があればいいなと思います。他の国では着陸判断をパイロットに委ねているところもあるんです。

このあたりは日本としてどのような制度を作っていくのか、というのを「空の移動革命に向けた官民協議会」で話を進めています。空の移動って重力に逆らっているので自然の摂理に反していて、どうしても考えることは増えるし、求められる安全水準は高まるんですよね。

――なるほど。もしそういったルールが出来上がってきて、エアモビリティでの移動が生活に溶け込むようになってくると、どのような未来になると思いますか?

手塚氏:「生活圏」がもっと広くなる世界、ですね。

今の世の中って少し歪んでいるところがあると思っているんです。自分の住む家も、通勤の苦痛から逃れることを考えて決める人が多いですよね。でも、狭いのに家賃が高くて満足していない、という人は多いと思います。

もし空の移動が当たり前の世の中になれば、例えば「海が好きだから伊豆に住もう」とかっていうことができるようになるんです。ライフスタイルの幅が広がりますよね。

それがどういう状況かっていうと、いろんなビルの屋上が離発着地になって、何機もエアモビリティが離発着しているような世界です。

――まさに映画の中の世界のようですね。

手塚氏:技術的には不可能ではない世界なんです。そんな世界を早く作るためには、まず業界を盛り上げていく必要があると思っています。

みんなが知っている業界になって、もっと多くの人が、そういう世界を作りたいと思えば、自然と良い循環が生まれてくるはず。ちなみに弊社でも採用を行なっているんで、興味がある方はぜひご連絡ください(笑)。

(文・栄藤徹平)


手塚究(てづか・きわむ)
株式会社AirX 代表取締役CEO
早稲田大学創造理工学部 同大学院会計研究科修了。輸送問題の定式化/アルゴリズム開発の研究に従事。2012年(株)フリークアウト入社後、最年少マネージャーとして、旅行代理店・航空会社・旅行メディアを中心にマーケティング施策、広告商品の開発に従事。2015年2月(株)AirX創業。3次元の輸送手段を一般化し移動の不便を解消すべく、遊休航空機を活用した旅客輸送サービスを開始。2018年8月~「空の移動革命に向けた官民協議会(国交省/経産省)」構成員。

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