アメリカの宇宙政策の方向性を定める「国家宇宙会議(NSC:National Space Council)」が現地時間8月20日に開催され、Bridenstine氏が核熱推進の可能性について言及。どうやらこの技術は、宇宙開発のみならず国家安全保障領域においてもゲームチェンジャーになりそうだ。
・開発予算は1億2500万ドル
核熱推進とは、核分裂反応から発生する熱で水素を膨張させて噴射。これを推進力とするものだ。この核熱推進機構を宇宙船に搭載すれば、わずか3~4か月で火星に到達する可能性があるとのこと。大気のバリアがない宇宙空間では放射線量がきわめて高く、人体への悪影響は長く過ごすほど深刻なものとなる。火星に行く時間が短縮されれば、宇宙飛行士の浴びる放射線は少なくて済む。
NASAには、同技術開発のためにすでに1億2500万ドル(約133億円)の予算割り当てが承認済みだ。
・国家安全保障にも転用
会議では、核熱を電気に変換する技術が国家安全保障にも転用できることが強調された。対宇宙空間兵器の脅威が増しているが、衛星や宇宙船の発電力が上がればミサイルの射程圏内から離れられて運用できるという。これ以外にも、遠隔基地への電力供給や高出力レーザーによる隕石衝突回避についても言及。
じつは、原子力を用いた発電技術は惑星探査などですでに用いられていて、核熱以外の発電技術の開発も進められている。原子力というとまず抵抗感が生じてしまう我々だが、宇宙開発にとっては超重要技術との観点も備えておきたい。
参照元:Nuclear Propulsion Could Be 'Game-Changer' for Space Exploration, NASA Chief Says/Space.com