ベンチャーキャピタルのCoral Capitalは、2018年に国内スタートアップで資金調達した約580社について、800件以上の商業登記簿謄本を取得し、資金調達の詳細を分析。「Japan Startup Deal Terms by Coral Capital 2019 Summer」として発表した。
本レポートの意義
Coral Capitalは3年半前から起業家向けの情報を発信し続けてきた。本レポートは資金調達の実態を明らかにすることを目的としている。多様化する資金調達の手段は、状況や景気によってもさらに複雑に進行するため、先人の取った手段や成功への交渉術など知っておくのは大切だろう。
また、英語でも発行しており、海外投資家に日本の状況を伝え、言語の壁により敬遠されがちな日本企業への投資の意欲を持ってもらう狙いもあるという。
調査方法と結果
2018年の1年間で国内スタートアップで資金調達した企業は、TechCrunch Japan、PR Times等の報道またはプレスリリースなどの公開情報を基にリストアップ。そのため、未公開案件については含まれない可能性がある。商業登記簿謄本の大量取得に関しては、Graffer® 法人証明書請求などのGovTechサービスを開発している株式会社グラファーに協力を要請した。
レポートでは、ステージ別のバリュエーション、希薄化、優先株式の分配権の動向も分析されている。結果、3つの実態が明らかとなった。
①2018年の1年間で30億円以上の企業価値評価で資金調達を行った件数が、前年比で約2.6倍増加した。
②1億円以上の調達では、70%以上が優先株式(利息や配当などを他の種類の株式より優先的に与えられる権利を持った株式)を手段としており、その条件は起業家有利になりつつある。
③1億円以下のシード案件(創業直後の企業)の約10%は、J-KISSなどのコンバーティブルが利用された。
Coral Capitalとは
Coral Capitalは、500 Startups Japanの創業チームによって新たに立ち上げられた、シードステージの日本のスタートアップを支援するベンチャーキャピタルだ。総額約120億円を運用し、海の生態系を守るサンゴ礁(Coral)のように、起業家たちを支えている。Coral Capitalは2年前に、登記簿に基づいた調査レポート「調査レポート: 186社の登記簿から分かったスタートアップの資金調達の相場(https://coralcap.co/2017/06/deal-terms/)」を発行し、大注目を集めた実績がある。
今後は、今回の「Japan Startup Deal Terms 2019 Summer」を質・量ともに向上させ、「Japan Startup Deal Terms by Coral Capital」として継続的な発行を予定しているとのことだ。
シード期の若い企業にとって、資金調達は容易ではない。それでも、今回のようなレポートがあれば、より現実的な数字や手法が見られるため、成功への道標となり得るかもしれない。
PR TIMES