ALSとは、手足やのど、舌の筋肉、呼吸に必要な筋肉が衰えていく病気だ。
そんなALS患者をサポートすべく、「ALS SAVE VOICE」というプロジェクトが立ち上げられ、「患者の自分の声」をもとにした合成音声でコミュニケーションが取れるようになるサービスがリリースされる運びとなった。
主な開発元は、遠隔操作型のロボット「OriHime」、ならびにALSなど難病患者を対象とした視線入力システム「OriHime eye」を開発している株式会社オリィ研究所。音声合成プラットフォーム「コエステーション™」を提供する東芝デジタルソリューションズ株式会社、ALSの支援団体である一般社団法人WITH ALSと連携し、2019年7月31日よりサービスを開始した。
・視線入力装置「OriHime eye」、音声合成プラットフォーム「コエステーション」と連携
リリースされたサービスでは、声を失うALS患者の「自分の声」を合成音声として残し、失声後も自分の声を使って、コミュニケーションを行えるようにする。ALS患者が、視線を使った意思伝達装置「OriHime eye」と、音声合成プラットフォーム「コエステーション™」を使用し、自分の声で発話し続けられる。
【サービスの特徴】
▼大きな費用負担なしに、本人の声を簡単に残すことができる
▼発声機能を失った後も「OriHime eye」と組み合わせ、視線入力で文字を入力でき、自分の声で発話、コミュニケーションを取ることが可能
▼感情表現が可能な合成音声を生成できるため、ただ情報を伝達するだけではなく、感情を乗せた発話コミュニケーションが可能
(例:冗談を言う際は喜びの声で、怒った際は怒った声で、など)
▼すでに声を失ってしまった患者向けに、高精度の合成音声を男性、女性それぞれ3種類から選択できる
使い方はいたってシンプルな3ステップ。
◆STEP1:「コエステーション™」で音声を作成
まだ話せるうちに、iPhoneの無料アプリ「コエステーション™」により自分の声の特徴を学習させ、声の分身「コエ」を作成。
◆STEP2:「OriHime eye」と連携
意思伝達システム「OriHime eye」を導入。(病気が進行し、話すこと、手も動かすことが困難になった時点で購入補助制度の対象となる)
◆STEP3:自分の音声でコミュニケーション
「OriHime eye」の設定から「コエステーション™」と連携し、会話モードで発話したい文字を入力し、発声ボタンを押す。(この時、読み上げ時の感情を設定可能)
・クラウドファンディングで資金調達
この「ALS SAVE VOICE」プロジェクトは、社会問題に特化したクラウドファンディングプラットフォーム「GoodMorning」にて、2019年5月16日〜30日までの15日間にわたって資金調達を実施し、342万7610円を集め、実現に至ったという。クラウドファンディングページ:
https://camp-fire.jp/projects/view/153781
オリィ研究所では、2013年からALS患者会らと協力し、寝たきりになっても周囲とのコミュニケーションや活動を可能にする様々な方法の開発に取り組んできた。2015年には、寝たきり状態の患者に特化した視線入力の国際特許技術を開発し、2016年に「OriHime eye」として提供を開始している。
これによって、意思疎通はできるようになったが、当事者や家族から「本人に似た声で話せないだろうか」「もう主人の声を忘れてしまった」「自分の声が無くなることはとても寂しい」といった声が寄せられていた。また、本人の声を残す技術はこれまでにも存在はしているものの、質の高い合成音声の生成には十数万円~数百万円ほどの費用がかかり、一般患者にとって大きな障壁となっていた。
そういった問題も考慮し、「本人の声を簡単に残せて、かつ患者に大きな費用負担がかからずに利用できるサービス」を目指したという。
「ALS SAVE VOICE」プロジェクトの志はとても高い。将来的にALSなどが進行した患者が、遠隔操作型のロボット「OriHime」などを操作し、自分の元々の声をつかった合成音声で接客して働けるような未来、孤独にならない未来をつくっていきたいとしている。
また、現段階では、現状まだ発話ができ、自分の声を残せる患者のみにしか対応できないが、今後も方法を探っていくという。ALS患者以外にも、発話が困難になった人への幅広い活用に期待がかかる。
ALS SAVE VOICEプロジェクト
株式会社オリィ研究所
PR TIMESリリース