石灰石を主原料にした新しい素材はどのようにして生まれ、今後サスティナブルな世界をどう実現していくのか、株式会社TBM 経営企画本部マネージャーの杉山氏に話を伺った。
エコロジーとエコノミーを両立する新素材
Q1.LIMEXについて簡単に教えて下さい。
LIMEXは、世界中に安価で豊富に存在する石灰石を主原料にしており、プラスチックや紙の代替となる日本発の新素材です。
石油由来樹脂の使用量を抑え、袋や食品容器などのプラスチック代替製品や、メニュー表や広告制作物などの紙代替製品をつくることができます。さらに、使用済みの製品を回収し、元の製品より価値をあげて再製品化する「アップサイクル」と呼ばれる、マテリアルリサイクルが可能です。
Q2.どのような着想を経てLIMEXという新素材を開発したのでしょうか。
最初は、台湾製の石からできた紙「ストーンペーパー」の輸入代理店から始まりました。エコロジーの観点から注目度が高く、日本でもすぐに引き合いがありましたが、当初はノベルティなどのニッチな利用にしか広がらなかったんです。
「品質が不安定」「高価」「重い」という3つの課題を解決するために、メーカー側に品質改良を依頼しましたが、理解を得られませんでした。そこで、事業としての可能性を大きく感じた山﨑は、高品質で安価なエコロジーとエコノミーを両立する新素材の自社開発に着手したのです。
SDGsを達成するためにサステナビリティ革命を推進
Q3.国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を達成するための具体的な取り組みはどのようなものでしょうか。
当社はLIMEX事業を通じて、8つのSDGsを中核目標としています。
環境に配慮した新素材LIMEXの開発・生産・販売と、リサイクルの仕組みづくりを通じて循環型社会の構築に取り組むことで、SDG12の「責任ある消費と生産」に貢献しています。
また、紙の代替品としてSDG6・15、プラスチックの代替品としてSDG14、ライフサイクルのCO2排出削減によってSDG13に貢献。被災地である宮城県で生産プラントを操業し、雇用と産業を創出することでSDG8・9に貢献し、政府・自治体・学術機関等との連携によってSDG17の精神を体現しています。
その他に、オフィス内にSDGsのアイコンを設置することで自分ごと化を促進したり、様々な価値観を持った人間が働きやすい環境にするためのダイバーシティー&インクルージョンなどの活動も進めたりしています。
Q4.最後に、循環型イノベーション実現に向けての今後の展望を教えて下さい。
今後は、宮城県多賀城市に量産工場となる第2プラント工場を建設し、国内外へのLIMEX製品の普及を目指し生産体制の強化を図ります。
また、先日神奈川県で「かながわアップサイクルコンソーシアム」を発足しました。LIMEXのアップサイクルを通じた循環型まちづくりの構築を目指していく予定です。
単にLIMEX製品の供給ではなく、ものづくりで世界に貢献してきた日本生まれの技術や、循環型の価値観や仕組みを世界に発信していくことで、エコロジーとエコノミーを両立した循環型社会の実現を目指す「サステナビリティ革命」を進めていきます。
紙とプラスチックに変わる新素材LIMEXが普及すれば、地球資源の枯渇に歯止めがかかりサスティナブルな世の中に近づくかもしれない。LIMEXの今後の展開に期待したい。
LIMEX