そうした「医療僻地」でも網膜の検査を受けられるようにするのが、ブラジルのスタートアップPhelcom Technologiesが開発した「Eyer」だ。スマホと一緒に使うデバイスで、網膜の写真を撮ることができる。そして撮影画像をネット経由で眼科医に送って診断をあおぐことが可能だ。
・撮影は1分で
厳密にはEyerでは本当の網膜撮影とはならない。Eyerとスマホのレンズを使って人工的にイルミネートされた網膜をとらえる。眼科医でなくても、家庭医や医療スタッフなら操作可能という。
また画像撮影のために瞳孔を開かせる必要はなく、撮影はものの1分で終わるという。
・AI診断も開発中
撮影した画像はネットを経由してクラウドサーバーに送られ、それをもとに眼科医が診断する。なので、住む町に眼科医がいなくても専門家の診断を仰ぐことができるわけだ
一方で画像データはデータベースにも保存され、このデータをもとに同社は現在、さまざまな病気を自動的に検知する人工知能ベースのアルゴリズムを開発中という。
現状では、糖尿病性網膜症であれば80%の精度で診断できるが、同社はこれを95%に高めたい考えだ。
Eyerはすでに生産過程に入っていて、専用のクラウドも間もなく立ち上がる。Eyerの価格は、一緒に使うスマホ込みで5000ドル(約54万円)。眼科の診察室にあるような従来の検査機器は3万ドル以上するとのことで、発展途上国や医療僻地を中心に広く受け入れられる余地はありそうだ。
Phelcom Technologies
(文・Mizoguchi)