最近の研究によれば、高い精度でのタスク実行を求められるケースでは、ARによるガイドは不向きとのこと。どうやら、2m以内の近距離においては、ARのガイドによる作業の精度が落ちるというのだ。
現時点で最先端のARヘッドセットのひとつMicrosoft Hololensをもってしても、この課題はクリアできていない。
・ARヘッドセット装着で平均2.3mmの誤差
仮想現実と現実の両方のモノに同時に焦点を合わせることができない「焦点の競合」と呼ばれる現象があるが、研究では、この現象が精密な作業のパフォーマンスにどのように影響するかを調べた。実験ではMicrosoft HoloLensを使用。20人の参加者は、ARオブジェクトとして投影された点を実際の線でつなぐ作業を実施する。眼の前のディスプレイには連続した番号がふられた点が投影され、これと同時に現実にある紙/ペンを見ながら作業が進められた。
裸眼とヘッドセット装着した場合で作業の精度と比較したところ、前者の誤差は平均0.9mmだったのに対し、後者では平均して2.3mmの誤差が生じていたという。
さらに実験後のインタビューでは、参加者はARヘッドセット装着が作業の正確性に影響を与えなかったと感じていたことがわかった。
・現実の映像を重ね合わせるハイブリッドARシステムに期待
ARヘッドセットの有望な活用用途ととしては外科手術のガイドがある。ただ、手術のような精密な作業を要する場面で、手元に2.3mmの誤差が生じるとすれば実装はむつかしい。また、Microsoft HoloLensに関しては、米軍と4億8000万ドル(約530億円)の契約を結んでいて、軍事演習や実戦に活用するにもガイドに高い精度が要求されるだろう。
研究チームは今後、カメラによって取得した外界の映像にARオブジェクトを統合するハイブリッドARシステムを開発する計画で、これにより焦点の競合の課題がクリアできれることに希望を持ちたい。
参照元:Microsoft’s HoloLens Not Fit for AR-Assisted Surgery, Study Suggests/IEEE Spectrum