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Release ハンセン病問題に関する親と子のシンポジウム

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ハンセン病問題に関する親と子のシンポジウム

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今なお社会に残る、ハンセン病患者、元患者やその家族への偏見・差別。2月下旬、こうした問題の解消に向けたシンポジウムがオンライン配信されました。専門家や当事者の方々が出演し、基調講演とパネルディスカッションを通して、ハンセン病問題に関する課題や、正しい知識と歴史を次世代へ伝えていくことの大切さを訴えました。
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■基調講演
過ちを繰り返さないよう啓発を
公益財団法人人権教育啓発推進センター 理事長
坂元 茂樹さん
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ハンセン病への偏見・差別の大きな特徴は、法律が作り出したものであるという点です。明治~昭和期に制定された法律は、ハンセン病患者を社会から強制隔離するものでした。これが「ハンセン病は感染力の強い病気だ」という誤解を生み、患者や家族への恐怖感や差別意識の元となったのです。

その後、元患者による「ハンセン病国家賠償請求訴訟」、元患者の家族による「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟」において、熊本地方裁判所がいずれも国の責任を認める判決を下しました。二つの判決は、国の隔離政策によって元患者や家族が社会的差別を受けてきたと認定し、以降、国は当事者に対して補償を行うとともに、名誉回復などに向けて取り組んできました。

しかし、元患者や家族を真に救済するためには、社会に根深く残る偏見・差別の解消が必要です。そのためには、社会全体の意識改革を目指した粘り強い啓発活動が欠かせません。前述の家族訴訟の判決は、家族が受けた被害を「人生被害」と表現し、弁護団団長は、地域社会の一人一人が加害者であったと指摘しました。こうした言葉は、偏見・差別による被害の大きさや、社会の誰もが意図せず加害者になり得ることを示唆しています。

ハンセン病問題の過ちを繰り返さないよう、そして元患者や家族への偏見・差別を排除できるよう、新たな人権教育や人権啓発手法の開発を急ぐとともに、何をなすべきか、私たち一人一人が考えていく必要があります。

■パネルディスカッション
この知見を次の世代へ
【コーディネーター】
全国人権擁護委員連合会 会長
内田 博文さん
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パネルディスカッションでは、4名のパネリストの方々に報告いただきました。加えて、森さんには入所者の方々が少数化・高齢化する中での療養生活の課題を、「ハンセン病国家賠償請求訴訟」において当事者の先頭に立たれた竪山さんには、判決以降変わったこと、変わっていないことについてお話を伺いました。

また、黄さんにはハンセン病に関わる人権教育啓発の見直しにおいて、特に注意していくべき点についてお聞きしました。潮谷さんには、平成15年の宿泊拒否事件の際に、県知事として他機関と連携して問題解決に尽力されたご経験から、自治体が偏見・差別の撲滅に取り組む場合の注意点についてお教えいただきました。

貴重なお話をしてくださったパネリストの方々に、心より御礼を申し上げます。

偏見・差別の一掃が私たちの願い
【パネリスト】
全国ハンセン病療養所入所者協議会 会長
森 和男さん
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私は9歳の頃にハンセン病療養所に入所しました。高校卒業後、一度社会復帰し大学へ進学。その後就職しましたが、ストレスからの病気の再燃によって再入所し、現在は自治会活動に打ち込んでいます。歴史を振り返ると、ハンセン病患者は病気が治癒し得るようになってからも、国によって強制隔離され続けてきました。そのために、国民の間に「ハンセン病は怖い病気」という考えが定着し、患者、元患者や家族は厳しい偏見・差別の中に置かれてきました。

二つの熊本地方裁判所の判決は、私たち元患者や家族が抱える問題の解決に向けて大きな力になると捉えていますが、今後も人権啓発や人権教育の普及・啓発活動に一層取り組んでいかなければと思っています。

しかし、偏見・差別は根深く、容易には変わりません。現在、療養所入所者の全国平均年齢は86歳。残された時間は少なく、偏見・差別の一掃は私たちの最後の悲願といえます。

現在のコロナ禍でも偏見・差別の問題が起こっていますが、これは日本の社会構造や日本人の意識と関係があるのかもしれません。全国の親御さんやお子さんがこの問題について改めて考えてくれることを、そして皆が共生できる社会になることを願っています。

「強制の場」を「共生の場」へ
【パネリスト】
ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会 事務局長
竪山 勲さん
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現在のコロナ禍では、感染者や家族の方々が差別を受けていると聞きます。私たちがハンセン病問題から学んだ教訓は「いかなる病気であろうとも、偏見や差別をしてはならない」ということだったはずなのに…と、非常に悲しく思っています。

私は13歳の時にハンセン病療養所に強制入所させられました。父と離れ、姉や兄も偏見・差別にさらされ、私がハンセン病になったばかりに家族はバラバラになりました。多くの悲劇の元になった法律「らい予防法」はすでに廃止されましたが、これは患者の人権を蹂躙(じゅうりん)したうえ、家族の人生までも大きく狂わせたのです。

今、私たちは「強制(隔離)の場」を「共生の場」に変えていこうという思いで活動をしています。しかし、今なお、療養所からの社会復帰ができない人、故郷に帰れないまま療養所の中で亡くなる人がいます。この問題は、元患者や家族ではなく、社会が変わらなくては解消できません。そのために、私たちは一生懸命、啓発活動を行っています。皆様一人一人の意識が変わってくださることが、私たちが社会で一緒に暮らせる「共生の場」を作り出すことにつながるのだと、知っていただければと思います。

患者家族の被害とは何だったか
【パネリスト】
ハンセン病家族訴訟原告団 副団長
黄光男さん
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私の両親は、私が幼い頃ハンセン病にかかって療養所に入りました。でも、その事実を語れるようになったのは50歳を過ぎてからのこと。母が病名を教えてくれた時のヒソヒソした様子から、この病名を人に言ってはダメなのだと強く思い込んでいたのです。

平成28年に始まった家族訴訟では、原告の方々が裁判長の前で自分の経験を語ったのですが、皆に共通していたのは、家族が療養所に行ったと知られた途端、友達や近所の人たちが手のひらを返すようにいじめる側に回ったという点です。家族の被害とは、一般市民から受けた差別被害だったのです。

このような差別を一つずつなくしていくためには、力を持った者の言うことを鵜呑み(うのみ)にせずに、おかしいことに対して「おかしい」と声を上げる勇気を持つことが必要です。

しかし、身内にハンセン病元患者がいることを語れないまま暮らしている方は、今もまだたくさんいます。そうした悩みを解きほぐすには仲間づくりが大切。同じ立場の方は、ぜひ私たちが作っている「家族の会」に参加し、語り合っていただけたらと思います。

誰一人取り残さない社会を目指す
【パネリスト】
社会福祉法人慈愛園 理事長・前熊本県知事
潮谷 義子さん
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熊本地方裁判所における「ハンセン病国家賠償請求訴訟」で判決が出された平成15年当時、私は熊本県知事を務めていました。判決後、県では療養所の入所者や元患者の方々を対象に、故郷への訪問旅行を実施していたのですが、2回目の時にホテル側から「他のお客様に迷惑」との理由で宿泊拒否の通知がありました。この件を人権問題として取り上げたところ、一般の方々から数々の批判や非難があり、改めて偏見・差別の根深さを実感しました。

こうした差別の解消に向けて、私たちは真剣に取り組んでいかなければなりません。見えない所にあるものに対しては、想像や根拠のない噂が広がりやすいものです。これを差別につなげないためには、関係者がきちんと説明責任を果たし、正しい知識を伝える人権啓発・人権教育を子どもの頃から行っていくことが重要です。

国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)は、全加盟国に「誰一人取り残さない社会を作っていこう」と呼びかけています。ハンセン病元患者や家族の方々も取り残してはなりません。偏見・差別のない社会をどう作り、次の世代にどう手渡していくか。この点を大切に、引き続き啓発に取り組んでいきます。

【知っていますか?「子どもの人権110番」】
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・みんなの人権110番 0570-003-110(ゼロゼロみんな の ひゃくとおばん)
・子どもの人権110番 0120-007-110(ぜろぜろなな の ひゃくとおばん)
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http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken21.html

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●法務省人権擁護局ホームページ http://www.moj.go.jp/JINKEN
●人権啓発活動ネットワーク協議会ホームページ http://www.moj.go.jp/jinkennet
●YouTube 法務省チャンネル https://www.youtube.com/MOJchannel
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●人権ライブラリー http://www.jinken-library.jp

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