そんな要望を満たす新感覚のシステムが、この「GENCHI(ゲンチ)」。現地に行きたい人と行けない人とをマッチングしながら、リアルタイムで中継動画配信を実施するという、これまでにないクラウドソーシング型サービスだ。
考案者は、合同会社toraru社長の西口 潤(にしぐち じゅん)氏。サービス提供の経緯など、詳しい話を聞いた。
・クラウドワーカーがウェアラブル機器で現地中継
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至ったきっかけから、お聞かせください。
私には親の介護で旅に出られない友人がいて、(その人のために)いろいろな場所の旅先の映像を共有したいと考えたのが始まりです。しかし、撮影者が私ひとりでは行き先が限られますし、そもそも既存ツールでは、簡単に実現できませんでした。
その頃、仕事でクラウドワーカーの主婦の方に、営業リストの作成をお願いしていました。そこから、誰でも簡単に中継できる環境を創ることができれば、彼女らに日本中のさまざまな場所の撮影の仕事もお願いできるようになると、ひらめいたのです。(中略)
日本に来たくても来られない外国人や、旅に出られない高齢者たち。その需要を、旅に出たい人や地方に住む人の仕事(クラウドワーク)にできれば、とてもいいのではないかと考え、それを形にしました。
Q2:「GENCHI」とは、どんなサービスなのでしょうか。
現地に行きたくても行けない人(高齢者・高齢者を介護する家族等)に代わってクラウドワーカーが現地を中継・撮影するサービスです。
それを実現するために、現地(旅先等)に行きたい人と行けない人をつなぐクラウドソーシング型のマッチングサイトと、スマートフォンを撮影者側のクラウドワーカーのウェアラブル撮影機器として組み込む、簡単な装置の組み合わせを用意しています。
・正式リリースは年末
Q3:サービス構築にあたって最も苦労したのは、どんなところでしょうか。
誰でも撮影者になれるよう、スマートフォンをウェアラブルのカメラとして使うアイデアに至ったのですが、実際には手ぶれ機能が弱くて実用に耐えず、半年ほど何機種も実験を続けました。その結果、ようやくSONYやギャラクシーの最新機種で、実用化できるレベルまで確認できたところです。
Q4:今後の展開について、教えてください。
現時点における、直近1年のロードマップは次のとおりです。まず、5月にベータテストをスタート、同時に認知症予防の研究を開始します。正式リリースは12月、翌年4月に海外の外国人客・海外赴任者といった国内の下見需要を取り込めるよう、英語版をローンチさせる予定です。
他にも車いすの方からも、撮影者になれるとのお話をいただいています。いろいろな事情がある人々に新しい働き方として、旅に出て撮影をして生活をするゲンチワーカー(トラベルワーカー)という職種を、創出できれば、と思っています。
依頼者も撮影者も、どちらにもメリットが生じるよう考慮された本サービス。ITだからこそ、成せる技だ。まずは、ベータ版のローンチを待つことにしよう。(取材・文 乾 雅美)
GENCHI