こうした“ヤミ民泊”を取り締まるのは、容易なことではない。物件の数があまりにも多く、法の目がなかなか行き届かないからだ。オーナーや不動産業者からすれば、実に頭の痛い話だろう。
そこをサポートするために生まれたのが、ヤミ民泊を通報するサービス「民泊ポリス」。民間による第三者機関として、試験的に運用してきたが、予想以上の反響と実績に、行政も注目しているという。
提供元は、昨年創業のオスカー。代表取締役CEOの中込 元伸(なかごみ もとのぶ)氏に、話を聞いた。
・法で規制しきれないヤミ民泊の現実
Q1:国内におけるヤミ民泊の状況について、教えてください。
現状では、民泊仲介サイトに存在するものの大半が違法の状態、いわゆるヤミ民泊です。一部のウェブサイトで合法とうたう、不動産オーナーの転貸許可付き物件や民泊ですら、旅館業法や条例に沿う設備・運営方法が整っていないことも、少なくありません。
今後は、民泊新法や国家戦略特区などの規制緩和により、法や条例の下では問題のない民泊が増加するでしょう。しかし、本質は合法か違法かではなく、周囲に迷惑をかけない運営ができるか否かだと考えます。
Q2:サービスを始めたことで、どのような変化が生じましたか?
正直なところ、民泊ポリス開設による社会への影響、民泊運営者(ホスト)への影響は、まだそれほど見られません。しかし、弊社では想像していた以上に、民泊による迷惑を被る方がいらっしゃるという現実を、目の当たりにしました。そして、それは今後も増加していくと思われます。
保健所も人手が不足している中、民泊問題を解決するには、ホスト・宿泊者・不動産オーナー・管理会社・住民それぞれが問題意識を強め、各々の立場で自衛するしかないのでは、と考えています。
・2つのサービスを追加し、監視機能を強化
Q3:新たに追加された2つのサービスについて、詳しく教えてください。
1つめは、不動産オーナーや管理会社が物件を民泊から守るためのパトロールサービスです。登録してもらった物件について、インターネット上をパトロールし、民泊に利用されていないかを監視します。
2つめは、引っ越しの際などに、民泊のある物件を避けたい方へのサービスです。ヤミ民泊は所在秘匿で運営しており、引っ越し先に民泊があるかどうかがわかりません。そこで、「民泊ポリス」で特定・蓄積してきた民泊募集を行う住所データ一覧と、引っ越し候補の住所を照会できるようにしました。
Q4:「民泊ポリス」の今後の展開について、お聞かせください。
行政の負担軽減を目的とした取り組みを、企画・強化したいと考えています。
また、インターネット上のあらゆる不動産情報のクローリング(自動情報収集)、画像解析技術の向上を進めつつ、精緻化と人的コスト削減を図る他、民泊募集住所の特定ノウハウと住所データの蓄積に、より一層注力していくつもりです。
新宿区では、違法民泊対策条例の検討会議を開催。ヤミ民泊撲滅のために、自治体も積極的に動き始めている。本サービスの出番も、これからもっと増えていくことだろう。民泊制度そのものが立ち消えにならないためにも、ぜひ頑張ってもらいたいところだ。(取材・文 乾 雅美)
民泊ポリス