手で描くだけで電気が通る魔法のペン「AgIC Circuit Marker」。
3Dプリンターでも実現できなかった電子回路を、特殊なナノインクの採用によって簡単に作れるようにした驚きのツール。
これを使うと、「開けたら光るバースデーカード」「紙で作ったルームランプ」など、複雑で難易度の高い作品でも、さくさくできあがる。折り紙のような手軽さで電子工作ができる夢の製品なのだ。
この11月には、描いた電子回路のパターンを消す姉妹品「Erasable Circuit Marker」が、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」に登場。早くも話題となり、資金調達まであと一歩という勢いを見せている。
東京大学の研究から生まれたという本品。今回は特に新製品である「Erasable Circuit Marker」にフォーカスしたいと思う。そこで、開発の鍵を握るAgIC、代表取締役、清水 信哉(しみず しんや)氏に、詳しいお話を伺うことにした。
発端は「電子回路の試作に関する研究」
Q1、「AgIC Circuit Marker」開発のきっかけと、「Erasable Circuit Marker」へ発展させるに至った経緯についてお聞かせください。
東京大学における導電性のインクを使った電子回路の試作に関する研究が元となっています。
2013年9月に東京大学の川原准教授が「Instant Inkjet Circuit」という題名で論文を発表した後、川原先生の元教え子であり、当時マッキンゼーで働いていた私が、先生と共に起業することを考えるようになりました。
その後、2014年1月にマッキンゼーを退職した私は、AgICを起業します。すぐさま「AgIC Circuit Marker」の製品化に取りかかり、同年3月には、米国クラウドファンディングサイト「Kickstarter」に同製品を出品しました。そこで事前予約を集めて量産化し、2014年9月から一般販売を開始したのです。
それより前に、試作品を用いて子供向けに電子回路を体験できるワークショップなどを多数行ってきたのですが、その中で最もユーザからの要望が大きかったのが、一度描いたパターンを消したいというものでした。
その実現のため再び研究を始め、製品化の目処が立ったため、この11月に「Erasable Circuit Marker」のクラウドファンディングプロジェクトを「Kickstarter」で開始した次第です。
Q2、「Erasable Circuit Marker」とは、どんな製品なのでしょうか?
こちらはいわゆる消しペンで、「AgIC Circuit Marker」を使って描いた導電性のパターンを消すことができるという製品です。
形状としてはマーカーの形をしていて、中にインクではなく、パターンを消すための溶液が入っています。これで導電性のパターンの上をなぞることで、導電性のパターンが剥がれてマーカーの先に吸着するようになっています。
教育現場から子どもの遊びまで、あらゆるシーンで活用できる製品
Q3、「Erasable Circuit Marker」は、どんなシーンでの活用が期待できますか?
「AgIC Circuit Marker」を使うシーン全体での活用が期待できますが、特に教育用途に最適だと思われます。
教育において最も重要なことは、試行錯誤です。言われた通りに手を動かして完成ではなく、自分で試行錯誤をしながら何かを作るのが、最も効率的な学び方ではないでしょうか。
この製品を使うことによって、電子回路を学ぶ際も非常に簡単に試行錯誤ができるようになるため、その点で有用だと考えております。
Q4、「Kickstarter」での反響は、いかがなものでしょうか?
2ヶ月間での目標1万ドルに対し、開始2週間で7千ドル程度が集まっており、今のところ目標は達成できそうなため、順調と言えます。
ただ、欲を言えばもっともっと高いところを目指したいので、引き続き露出などを増やしていかなければ、とは思っております。
Q5、正式出荷は来年3月とのことですが、それまでの展開について教えてください。
正式出荷と同時に、マーカー、消しペン、その他部品を同梱した初心者向けキットを発売しようと考えており、今後はその開発を行っていく予定です。
お子さんとの遊びや大学での研究など、応用先は無限です。是非とも手にとって遊んでみてください!